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このたび「中之条ビエンナーレ」は第2回を迎えることになり、いままで支えてきて下さった多くの方々に心より感謝致します。特に町民の皆様には「この町全体を美術館に変える」という今までにない試みを快く受け入れ、私たち作家と共に歩んで頂き、言葉では言い表せないほどの感謝の気持ちで一杯です。
 
すべての始まりをお話しすると今から10年前に遡ります。
1999年の夏の終わり、同じ大学の仲間と木造校舎に泊まりに行こうと誘われ、40人を越える大人数で「伊参スタジオ公園」に宿泊したのが、初めて中之条町へ訪れたきっかけでした。それからというもの、作家の友人たちが中之条町の使われなくなった宿泊施設をアトリエとして借り共同生活を始めるなど、頻繁にこの町とつながりを持つようになりました。この共同アトリエは「吾妻美学校」と呼ばれ、日本画家の平松礼二先生が中之条町と美術作家との最初の架け橋として立ち上げたもので、私も2006年にこのアトリエのメンバーとして中之条町で制作活動を行うようになりました。
しかし、建物の老朽化などの諸事情により、同年「吾妻美学校」は事実上閉鎖され、その移転先として町役場に紹介された場所が、偶然にも数年前に訪れた場所「伊参スタジオ公園」の一室だったのです。
「吾妻美学校」設立当初は、多くの作家が集まり創作活動の傍らワークショップなどを行い、地元の方々との交流を続けていました。しかし年々人数が減り、2006年に残っていた作家は6人となってしまい、ワークショップを続けていくこと自体が難しくなりました。そこで、今まで中之条町と作家達が築いてきた10年の交流を何か別の形で継続していけないかと考え始めました。
なぜ私たちはこの中之条町を選び、この場所で制作を続けていこうと思っているのか?
そして、この場所で作品を制作しているにもかかわらず、なぜ銀座で展示をおこなう事に違和感を感じるのか?

いま私たちは猛スピードで変化する社会に生きています。
あらゆる場面で、常に変化を迫られ適応していかなければ生きていけません。かつて日本にあった人同士のつながりは、コミュニケーションの変化や個人主義思想により希薄になりつつあります。しかし、この中之条町には昔ながらの風習や行事があり、地域の人々が自然に協力し合い生活をする里山が残っています。この町の祭事には殆どの町民が何かしらの形で参加し、地区ごとに団結して行事を行っているのです。地域で協力し団結して一つの目標に向かっていくということは、都会の生活では失われつつあることです。だからこそ、この場所でならば美術祭を通して再び「個」と「個」が強くつながり合うことが出来るのではないかと考えました。そして、この土地で作り出したものをこの土地に住む人々に見せるという自然なことから始めようと思ったのです。
そんな時、2005年に訪れたイタリアで行われる世界的な芸術祭「ヴェネチアビエンナーレ」を思い出しました。それはアートの持つエネルギーと熱気が町を包み込み、世界中から来た人々がアートを楽しみ、2年に一度の祭りに陶酔する町の風景でした。再び同じような熱意を持った作家を中之条町に集め、自分たちの手で美術祭を開催しようと思い立ったのです。
「中之条にビエンナーレを」
2年に一度、中之条に作家が集まり、地元と作家が一団となり自分たちの手で作りあげる美術のお祭り。
この企画を入内島町長にお話ししたところ、同じような考えをお持ちで、美術で町を活気づけたいとのご意見をいただき、急速にビエンナーレが現実味を帯びてきました。こうして中之条町の全面的な協力を受け、作家同士と地元の方々や来場者が一つに繋がるという目的のもと美術祭が動き始めたのです。

人間は生まれた時から美しいものを美しいと思う共通の価値観を持ち合わせています。
原始の人間が洞窟に壁画を描いたのも、金銭のためではなく、ただ美しいものを感じて残したい(または神に捧げたい)と思ったからです。美術作品は触れる人に新しい価値観を与え、同時に展示空間は作品の持つ世界観をつくりだします。その一つの価値観として「美術」があり、そして人間がつながる方法として「祭り」という形をとるのです。活気のある場所には人を引きつける磁力のようなものがあるのかもしれません。あるいは場所ではなく、ここに集まる人々に惹きつける何かがあるのでしょうか。1998年に十数人の美術作家たちが集いはじめた場所に、10年後のいま「中之条ビエンナーレ」という形で多くの人が集まり、作家同士や地域住民と交流を持ち続けられることはとても素晴らしいことだと思います。
「ふるさとに会える町」という中之条のキャッチコピーにある「ふるさと」という言葉には、自分の原点を思い出させるものがあります。「ふるさと」というものは場所ではなく人の心にこそ存在するものなのかもしれません。もちろん中之条町には歴史ある町並みや魅力的な温泉郷もありますが、この町の一番の魅力は何といってもこの里山に住む人間の繋がりなのだと私は思います。
ここに集う作家や美術作品、そして地域住民と、「中之条ビエンナーレ2009」を通して触れあってみてください。
きっと豊かな里山の恵みを収穫できると思います。

総合ディレクター 山重徹夫
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