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 2006年夏、群馬県中之条町で6人の仲間と共同でアトリエを借りることになった。
役場に紹介して頂いたのは伊参(いさま)スタジオと呼ばれる、今は廃校になってしまった木造校舎の一室だった。偶然にもこの 伊参スタジオは大学を卒業したときに、友人達と遊びに来て宿泊した思い出のある場所で、こうやって再び巡り会えたのも何かの 縁だろう。初めてこの校舎に出会ったとき、どこか懐かしく、優しく、そして人を引きつける力を感じた。
「なにか特別な事が始まる」そんなわくわくする気持ちを感じながら、この歴史が詰まっている校舎に絵の具やパネルなどの画材を 運び込んだことを覚えている。大学を卒業してからというもの、都内の会社に就職して殆どの時間を仕事に打ち込んでいた。私にとっ ては仲間と共同でアトリエを持ち、作品の制作ができるということだけでも大きな喜びだった。会社から独立してデザイン事務所を 立ち上げ、仕事が軌道に乗ると自分の時間が持てるようになり、早々に仕事が終り休日が取れると中之条のアトリエに行く事が楽 しみになっていた。

 最初は作品制作の場所だけの筈であったのだが、地元の方々が野菜を差し入れてくれたり、一緒に食事に誘われたりと、だんだ んとこの土地での交流や繋がりが増え始めた。上京して十数年という時間が経ち、同じ土地に住む人同士の関わり合いというもの を長らく忘れていた。住んでいるマンションの隣人の顔も知らない生活に気楽さを感じながらも、どこか孤立した生活に寂しさを 感じる。そんなとき、近所の人が野菜を差し入れに来てくれて立ち話に花が咲くことに素直に喜びを感じた。中之条の土地と繋がるにつれて、この場所で展示をしてみたいと思うようになった。それまで展示は都内のギャラリーですることが当たり前だと思っていた私は、作品を作った場所で作品の展示をするという当たり前の事に気づいていなかった。

「中之条でビエンナーレをやりたい。」
数年前にヴェネツィアビエンナーレを訪れてから、自分でも一度アートイベントをやりたいと考えていた。アトリエの仲間だけで小規模にやることも出来たのだが、この素晴らしい土地の風土と人を、出来るだけ多くの人に紹介したいと欲 が出てきた。自分が今まで培ってきたものを全力で出し尽くし、一緒に道を進む仲間がいれば、どんなことでも出来るという強い気持ちがあった。鉄は熱いうちに打てと、中之条で生まれた熱気は瞬く間に多くの場所に広がった。
作家に声をかけ始めたのはイベントが開催される数ヶ月前にもかかわらず、賛同してくれる作家仲間が次々と手を挙げてくれた。
2007年夏、こうして多くの力が中之条に集まり「中之条ビエンナーレ」という一つの形が生まれた。土地の人、参加してくれた作家達、訪れたお客さん、様々な人達がこのビエンナーレで入り交じり、作品と対面して多くの大切なものを産み落としてくれた。
それは大きな可能性と感動を未来につなぐものだと私は信じている。
そして中之条ビエンナーレ2007は幕を閉じ、スタッフは思い出を携え各々の生活に戻った。
 それから2年の月日が経ち、2009年再び私たちは伊参スタジオに集まった。第1回に出来なかったことを全て詰め込もうと、アー ティスト・イン・レジデンスやレストラン、カフェ、ショップなど色々なことを実現し、参加作家と作品数は前回の2倍を超えるほど の一大アートイベントとなった。スタッフのみんなが力を合わせ多くの人に助けられたおかげで、イベント来場者は16万人を超え るほどの大賑わいだった。各会場の入り口では地元の方々が赤飯やおやきでお客さんをもてなし、遠くの土地に住むもの同士が笑 顔で混じり合い、楽しそうにしている姿がいまでも印象に残っている。

 その後、この場所でもっと多くの人と繋がり、自分にとって価値のあるものを生み出していきたいと思い、私は中之条に移住することを決めた。住み慣れない土地は色々と大変なことはあるが、今もたくさんの仲間が支えてくれている。そして楽しみにしてくれる町の人がいる。それだけでこの土地で生きていく理由になった。
これから、この土地で起こるであろう何かに向かって、私は全力で進んでいきたいと思う。
 ビエンナーレの第1回は1つの点でしかなかったが、第2回で点は線となり進むべき方向を見せてくれたと思う。第3回には線から面となり、もっと多くの人に見える形として価値を持つものになることを願っている。2011年夏、中之条ビエンナーレ2011が、どれだけの人を結びつけるのか、どんな感動が待っているのかいまから楽しみにしている。

総合ディレクター 山重徹夫
  主催:中之条ビエンナーレ実行委員会  後援:中之条町/群馬県/(財)文化・芸術による福武地域振興財団 バナー広告募集 | 応援スポンサー募集 | 記事・写真掲載について 
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